【ゲーム感想】大逆転裁判
キャラクターの刷新のインパクト
首が回らなくなってきた逆転裁判
大逆転裁判を語るにあたって、個人的にはやっぱり今の逆転裁判シリーズが抱える問題から語っていった方が良いかなぁ、と。
逆転裁判シリーズは、4での換骨奪胎に失敗したんですよね。
逆転裁判4から主人公を成歩堂弁護士から王泥喜弁護士に変えたのに、なぜか前作の主人公が全部いいとこどりをしてしまったりと、せっかく過去作と決別できるであろうタイミングで前作キャラを中心に据えるという大失策をやらかし、しかも一部ファンから黒歴史扱いされるというダブルの偉業を達成。
ちなみに私は逆転裁判4は前作キャラさえ出しゃばらなければ良作だったのに、とちょっと悲しい思いでプレイしていました。
さておき、こうして黒歴史扱いされた逆転裁判4は、その続編で挽回を目指すためか、逆転裁判5でまさかの成歩堂弁護士復活と新主人公(弁護士)を追加という荒業に出ました。
ストーリーも全部5話しかないのにプレイアブルキャラが3人もいるので群像劇オムニバス状態でした。
こうしてリストラに失敗した逆転裁判は最新作の逆転裁判6は同窓会会場と化しています。
ゲームシステムとしては結構面白いんですが、逆転裁判6はキャラクターの制約がすごく多く、窮屈な感じがしました。
逆転裁判7が出るとしたら改めてリストラに挑戦していただければ幸いです。
ちなみにスピンオフとして出た逆転検事は、残念ながらやっていません。
人間関係をリセットした新作
大逆転裁判は、このもはや定期開催される逆転裁判同窓会を何とかしようとしたと思われる作品ですね。
ファン的には、巧舟が戻ってきた!ってのも重要なのだと思うのですが、シリーズとして俯瞰で見ると、こっちの「人間関係リセット」が重要なのだと思っています。
主人公は成歩堂龍一の先祖という設定なので、パラレルワールドではない、というのを明言してるあたりも、既存のファンもちゃっかり狙ってて良いですね。
この辺りのチョイスはやっぱりうまいな、と思うところです。
結果的に、今作は元の逆転裁判シリーズに通じるキーワードや設定があるものの、すべてのキャラクターが一新されていることから、過去作の制約から解き放たれた自由さを強く感じました。
一部システムの見直し
霊媒関連のシステムも一気に削除
これはもう当たり前なんですが、綾里家が出てこない今作は、霊媒に頼ったシステムがなくなりました。
霊媒に頼ったシステムってあれですね、勾玉突きつけるやつです。サイコロ錠。
あれはあれで確かに楽しかったのですが、流石に5回もサイコロックのシステム見たらそろそろ良いかなって感じですし、わざわざ新シリーズなのに本家のシステムをそんなところまで踏襲しなくても良いと思うので、これで良かったんだと思います。
追加システムはちょっとヒネリを入れてきた
代わりに追加したシステムは結構ヒネリを入れてきていて、一つ目の推理劇場は明らかに間違っているホームズをいなす形ですすめるので、プレイヤーの自尊心を非常にうまい形でくすぐるように出来ていると思います。
ついでに、常にホームズくんがめちゃくちゃなキャラをしていることから、道化っぽさが薄れるのも良いですね。相方を探偵にしたのはこのあたりも踏まえてすごい良く出来てるなぁ、と感じました。
ただ裁判の陪審員制度はかなり大きなマイナスでした。
裁判の途中で陪審員が全員有罪と言い出し、それを成歩堂が反論(と言うより大体は論点のすり替え)によって「もう少し審議しても良いかな」って言わせるシステムなんですが、あまりに簡単に説得されてしまうことと、一回の裁判の中で、審議が停滞するたびに割って入って有罪と騒がれるので、とにかくシナリオとしてのテンポが損なわれるんですよね。
このあたりの不評を受けてか、大逆転裁判2になってから陪審員制度は使い所を変えてきたので、ストレスは減りましたが。
よく出来たシナリオと最悪の続編商法
ファンを信頼し、第一話から攻めた構成
大逆転裁判1は第一話から納得いく決着がつかないという非常にインパクトのある作りで、これまでプレイしてきている逆転裁判ファンを非常に信頼している作りだと思いました。
これがシリーズ第一作だったらチュートリアルでちゃんと決着をつけないなんてやる気あんのかみたいな批判を受ける気がするんですけど。
同様に、第三話でもちゃんとした決着にならないので、大逆転裁判1は実に担当した事件の40%は微妙な結末を迎えているのですが、あくまで最終話ではちゃんと伏線回収するからついてきてね! という、意識は感じました。
ただこの作りはプレイヤー(ファン)をちょっと過信しすぎなんじゃないかなぁと思っていて、その意味で、大逆転裁判は結局ファンとの関係をリセットして新しい風を吹かせる力は足りなかったんじゃないかな、と思います。
そして最悪のエンディング
まぁ、そんな感じで、「最後にはちゃんとこれを畳んでくれるのかなぁ」とワクワクしながら第五話を迎えて、「あれ?風呂敷が畳まれないぞ?」と思いながらエピローグを読み。
エピローグで新しい謎が出て大逆転裁判が終わりました。
これね、キレないわけが無いと思うんですよ。
上述の通り、第一話からかなり攻めた仕掛けになっていたのですが、それを何とかしてくれるのが逆転裁判だ、っていう期待があったから続けられたわけです。
ミステリーは最後の数行で全部ひっくり返せるから面白いし、そうやって最後に綺麗にまとめたのが逆転裁判だった、っていう評価があったわけです。
それがですね、大逆転裁判をクリアした時点では特に何の謎も解決していない後世になっているんですよ。
どう考えても続編ありきで作ってるわけですね、このシナリオ。
別にそれ自体は構わないのですが、大逆転裁判の続編を制作発表したのは発売から14か月後(2016年9月、TGS)なんですよ。
発売日に買って翌月クリアした私は13か月間「未完成のゲーム」だと思わされ続け、続編発表された時も「これで終わるのか」って要らぬ心配をする羽目になったわけです。
これはすごいマイナスでした。
続編は完全に前作ありきで作ってきた
ということで、続編、大逆転裁判2です。
こっちは第一話からいきなり前作の重要キャラが死んだりして、最初からクライマックス状態です。
このやり方は最近の逆転裁判にはなかったので、結構面白く感じました。
プレイしている私としては前作から2年近く経過して薄れていたテンションを戻すには充分だったので、結構よかったことは良かったです。
ただ、もう少し前作を振り返るシーンを増やしてくれた方が、2年の間に細かい伏線を忘れていったので気を付けてほしかったなぁ、と思ってます。
前作の伏線をすべて回収しきった続編
続編としてうまかったのは、前作で決着が着かなかった問題すべてに決着をつけたことが一番でした。
個人的なことを言えば別にそこまで解決しなくても良かったのでは? という謎もいくつかあったことは否めないのですが、準備している謎すべてに答えをちゃんと提示したってのは良かったですね。
特に最後の二話は怒涛の展開で、そうそう、これが逆転裁判に求めてるものなんだよと思いながらプレイしました。
エピローグでもちゃんと伏線をさらっと回収していて、ちゃんとミステリーしていたのが好感触でした。
というか、前作のエピローグで謎をばらまいて終わったのをちゃんと畳んだだけなのかもしれませんが。
まとめ
せめて大逆転裁判発売時に続編制作を発表してほしかった
ゲームとしては面白くプレイしていたのですが、続編があることを同時発表しなかったこともあり、続編プレイ中も「でも前作で裏切られたからなぁ」みたいな思いがずっとあったのが正直な感想です。
ちょっとだけ精神的にブレーキがかかってしまいましたし、かなりうがった見方でプレイしていたのは否定できません。
ただ、じゃあこの二作を同時に発表して、続編を待ってから同時に買ったら面白かったか、というと、それがちょっと難しいところでして。
続編を渇望する期間はやっぱりそれなりにスパイスになっていたことは事実ですね。
いずれにせよカプコンに対する信頼は底辺に落ちちゃいましたけど。
次は「超」逆転裁判あたりを
この作品で一応大逆転裁判の物語は成歩堂龍之介の成長物語としては終わりを迎えています。
これ以上進めていくと、本家逆転裁判の成歩堂弁護士みたいにゲーム側の都合でどんどん無能ので、続編はあんまりやりたくないなぁ、と思っています。
小説とかアニメとかでやる分には有能弁護士として描写できそうですけど。
こういうゲームは「続きが見たいなぁ」って思う部分で終わらせた方が楽しいですよね。
ということで、次回は、また別のキャラクターで、超逆転裁判あたりを出してくれるのを期待しています。
あるいは、極逆転裁判とか。
逆転裁判も、「逆転裁判外伝:新人弁護士希月心音の憂鬱」とかもう何でもいいけど、キャラクター絞って出してほしいと思ってるんですけど。
やっぱり売り上げが悪くなるからダメなのかなぁ。